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キッチンみのり主宰 山上公実(Hiromi Yamagami)さん
喜びが連鎖する 有機的な場所にしたい 【第3話】

やまがみ ひろみさん

飲食店勤務を経て、2016年より京都・三条大宮にある築90年の町家で、料理教室「キッチンみのり」をスタート。旬の食材や乾物を使い、おばんざいや薬膳の知恵を取り入れた料理を提案。味噌や梅干しなどの保存食作りも教えている。職人さんを招いての講演会やワークショップも積極的に開催。

オープンから3年。料理教室のみならず、講演会やワークショップなど、学びの場としても機能している「キッチンみのり」。まさに実りあふれる有機的な場所へと変容しています。インタビュー最後となる第3話では、料理教室以外の活動にフォーカスしました。

講演会やワークショップなど
学びの場作りも大切な活動

毎日をていねいに暮らし、足元を大切にする。「キッチンみのり」は、来てくださるかたたちが、そんな生活の基本をふと見直せるような場でありたいと願っています。

活動の軸になっているのは「食」ですが、生産者、環境、職人の技などにも目を向けて、それぞれをよく知ること。そして、すべてがつながり合って成り立っていることもお伝えしたくて、料理教室と並行して「このテーマなら、この人」という専門家を講師に招いて、講演会やワークショップなども開催しています。

講師としてお願いしているのは、そのかたの仕事や生き方に対する姿勢に共感を覚えるかた。次世代にもつないでいきたいと思うことをされているかた。

これまで、木桶職人、木工職人、梅農家、発酵の専門家、味噌蔵の蔵主、お茶の先生、こんにゃく店の女将、陶芸家、魚屋さん……、さまざまなジャンルのかたに講師として来ていただいています。

専門家自らがレクチャー
してくれる特別な時間

たとえば長崎県五島列島の「桶光」の木桶職人である宮﨑光一さんを招いたワークショップでは、桶ができるまでに、たくさんの人の手がかかっていること、木の構造、木桶の仕組みなどを、詳しくお話ししていただきました。

宮﨑さんは、五島列島の桶職人ですが、木桶職人集団「結い物で繋ぐ会」を同志と立ち上げ、大桶の製造や修理をはじめ、木桶の取り巻く環境を整えるために頑張ってらっしゃるかた。ワークショップでは、参加のみなさんに、木を枠にはめる作業もしていただきました。

木工職人ののぶちゃん先生こと岩出信彦先生とは、いっしょに「かつお節削り器」を手作りしました。かなづちでトントン叩く作業は、子どもでも簡単にできること。これまでにワークショップを2、3回行いました。2019年初めには、先生をお招きして彫刻刀で作る木のパン皿ワークショップも開催しました。

キッチンみのりでは、味噌や梅干しなど、日本の伝統保存食にも力を入れています。6月の梅の実がなる時期には、和歌山で梅農家をしている友人Mika’s lovely farmの中坂美佳さんに梅をたくさん持ってきてもらい、梅干しのワークショップを開催。梅の実がどんなふうに育つのか、どう管理しているのか、梅にまつわる話をたくさんしてもらいました。そして私は、梅干しの作り方をお教えします。

「魚の手開き教室」の講師は、私の弟に頼んでいます。実家は鮮魚と乾物の店ですから、弟は毎日、市場で魚を仕入れてさばいているプロ。弟の指導でみなさんがさばいた魚で、私が簡単なアレンジ料理をお教えして、いっしょに味わっています。

外国のかたにも料理で
日本の文化を伝えたい

もともと海外のかたに日本の文化をお教えしたい、という気持ちはありましたが、それがどんな形でできるか具体的にわからない状態でいました。でも「キッチンみのり」を始めたことで、料理を通してお教えできる、伝えられることがあるんじゃないか、と思い始めました。

そんなおり、外国人旅行者のガイドをしている友人が「外国の人たちを、お連れしてもいいかな」と、海外からのお客さまを連れてきてくれたり、たまたまウェブサイトを見た海外の旅行者が訪ねてくれたりと重なり、それらをきっかけに外国のかたにも「キッチンみのり」で、和食を紹介するようになりました。

知らない間に
SNSで拡散!

外国のかたには「おだしは、こんなふうにとります」「京都の伝統野菜には、こんなものがありますよ」など、より日本や京都らしさを話に盛り込むようにしています。「お漬け物は、ここのお店のものがおいしいですよ」と近くの商店街を案内することも。

料理をしたり、買い物をしたり、長い時間をいっしょに過ごすので、お互いにとても距離が近くなり、帰国されてからもメールをいただき、交流がつづいています。

また教室を訪れたみなさんそれぞれが、SNSで「キッチンみのりに行ったらよかった!」「日本に行くなら、ひろみさんのところに行くといい」と、私の知らないところで、「キッチンみのり」を広めてくださるようになりました。

2018年4月には、イスラエルの女性が、ここに来られてイスラエルの人気サイトに「キッチンみのり」を「すごくアットホームにいろいろ教えてもらい、料理もとても美味しかった!」と紹介してくださいました。

そうすると翌日からイスラエルの人たちからの申し込みが殺到。イスラエルの人たちは、良いと思ったらすぐに情報をシェアされるようで、一時期、連日イスラエルからのお客さまで超満員。

ある時は、修学旅行で来ているデンマークの学生さんを一度に30人ほど迎え、部屋はぎゅうぎゅうでしたが、心の通う、思い出に残る楽しい時間を過ごしました。先生も大変気に入って下さり、翌年もその学校から大勢の学生さんを迎えることとなりました。

若いころにいろいろ海外を旅しましたが、この教室をしていなかったら、イスラエルやデンマークの人などとじっくりお互いの国の話をする機会はなかったかもしれません。

それらの国の食文化はもちろん、イスラエルで起こっている紛争についても、もっと知りたいと思うようになりましたし、デンマークの福祉や教育システムについても、より興味を持つようになりました。 スペインやオーストラリア、アメリカなどからも来ていただいていますが、出会いによって視野を広げさせてもらっています。

地元だけでなく、遠方のかたや海外のかたまで、たくさんのかたが「キッチンみのり」を訪れてくださっているのは、ほんとうにうれしいこと。

昔から受け継がれてきたこの町家という場所を、これからもみんなで料理をしたり、人や物をつないだり、喜びが連鎖したりといった有機的な場所にしていきたい。ここに来てくれる人、一人一人の心に響けば、そこからどんどん広がっていきます。そういう架け橋になれたらいいなと思っています。

「キッチンみのり」の詳細はウェブサイトでチェック!

http://kitchen-minori.com

撮影/石川奈都子 取材・文/小野貴美子

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