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『小さな森イスキア』主宰 吉田俊雄(Yoshida Toshio)さん/吉田紀美子(Yoshida Kimiko)さん
ともにいるだけで 助けになる 【第1話】

よしだ としおさん/よしだ きみこさん

1998年、赴任中の兵庫県姫路市で『森のイスキア』の佐藤初女さんに出会う。2003年に退職後、東京に戻り『小さな森東京』として初女さんの活動をサポート。2011年から被災地支援をスタート。2016年、福岡へ転居し『小さな森イスキア』に。2カ月ごとに集いを開催している。

『森のイスキア』の佐藤初女さんの講演会やおむすび講習会で、見かけたことのある人も多いのではないでしょうか。吉田俊雄さん、紀美子さんご夫妻の『イスキア』としての最初の活動は、初女さんのアテンドや講演会が主でした。2016年、初女さんが帰天されてから、お二人は東京から故郷・福岡へ。いま活動の拠点とする『小さな森イスキア』には、『森のイスキア』のように、全国各地から悩みや苦しみを抱えた人たちが数多く訪れています。

『森のイスキア』の活動を受け継いで

俊雄さん:『小さな森イスキア』は訪れるかた、どなたでも受け入れて、食事をともにする場所です。佐藤初女さんが『森のイスキア』でなさってきた活動をそのまま受け継ぎ、ここ福岡で行っています。

『森のイスキア』を訪れるかたの多くは、悩みや苦しみを抱えている人でしたが、初女さんは誰をも受け入れ、手料理でもてなし、相手の話にじっと耳を傾けていました。話している間は、ほとんど口をはさみません。ただ共感して聴くだけ。その相手が自分自身で答えに気づくことを信頼して待っていらしたのです。それが真に“聴く”ことだと、私たちも受け止めて、お手本としています。

ここにも『森のイスキア』のように、さまざまな悩みや苦しみを抱えたかたが見えます。先日は、息子さんが自死されたという60代の男性が見えました。自分は息子を救えなかった、とほんとうに自分を責めて責めて……。家族の誰かが自死したとき、家族の中では、ある意味いたわり合うけれども、ときとして責め合うこともあるんですよ。あのときあなたがこうしていたらって。

その悲嘆が大きいほど、家族の誰かに怒りの矛先が向かうことがあるんです。そのご家族も、ほんとうに危機的な状況でしたね。そのかたがいらしたときも、私たちは食事をともにし、話しながら何か心に決めたことがおありのようでした。その後、家族がだいぶ落ち着きましたというご連絡をいただいたときは、嬉しかったのを覚えています。

みんなで分かち合う“イスキアの集い”をスタート

俊雄さん:現在の活動の中心は、2カ月ごとに開催している“小さな森イスキアの集い”でしょうか。佐藤初女さんに生前会いたかったという人から「みんなで集まる場所がほしい」という要望を受けてスタートしました。

小さな森イスキアの集いは、たいてい朝10時30分から。みなさんが集まったら、まず私が『森のイスキア』や佐藤初女さんのスライドを交えて自己紹介をします。それから、お越しくださった人それぞれに自己紹介をしていただきます。定員は、テーブルの大きさに合わせて7人。一人一人のお話を聞くには、ちょうどいい人数です。

その後、佐藤初女さんの紹介DVDを観て、みんなで初女さんのおむすびを作ります。こちらでも料理を1、2品用意していますので、ランチはそのおむすびとセットで。みんなでいっしょに食べているうちに、自然と話が始まり、分かち合う時間となりますね。

紀美子さん:特に私たちがリードするというより、みんなでいっしょにおむすびを作って、それをいっしょに食べると、初対面でも自然に一つになりますよ。そこで何か問題を抱えている人がポロッと悩みをおっしゃって、分かち合いの時間が始まります。毎回、集まる人によって内容や雰囲気が変わって素晴らしいです。

アドバイスは不要。大切なのは共感して聴くこと

俊雄さん:ここは相手が話したいこと、特に気持ちを聴く場所ですから、次のような約束事があります。

・自分のことを話す

・ここで聞いた話を外で話さない。この場所だけの話にする

・沈黙を尊重する。無理に話さなくていい

・人が話しているときは、最後まで聞く。評価、批判、アドバイスはいらない

この“聴く”というのが、ほんとうに難しいんです。自分が正しいと思っているほど、それを相手に説明したくなりますが、そういうものではないからです。共感が大切です。ここでは皆さん人の話に共感しながら、よく聴いてくださっています。

そこでみんなが分かち合って、それで別れる。一応16時終了としていますが、話が途切れず、なかなかそれで終わらないことが多いですね。

あるがままの自分を受け入れてくれる場が必要

俊雄さん:ここを訪れるかたもそうですが、人は誰でも悩みや苦しみを抱えています。なぜかというと、あるがままの自分を受け入れられないからなんですね。でも裏を返すと、夢や理想があるからこそ、悩みや苦しみが生まれるわけです。だから、それ自体は決して悪いことではありません。

大切なのは、あるがままの自分を受け入れること。実は、私たちは誰でもそのままで神さまに愛されているのです。自分の弱さや欠点、不完全さを認めることが自己肯定の始まりだと思うのです。

ただ、そんなあるがままの自分を受け入れるのが難しいときがあるのも人間です。そんなときにともにいて、あるがままを受け入れて、聴いてくれる人がいるだけで援助になるのです。素直に話し合える場が、ほんとうに必要だと感じます。

紀美子さん:お越しくださったかたの話を聴いて、それで私たちは後追いをするわけではありませんが、先日見えたかたは、また別の日に訪れて、たくさんのパンを差し入れてくださったんですね。「ほんとうにお世話になりました。なんかスッキリしました」って。

俊雄さん:僕らは何かをしているわけでもないし、何かを求めているわけでもない。ただ、何でも話せる安心安全な場所がある。それがみなさんの支えになっているんだなと感じます。

紀美子さん:人を変えることはできないけれど、そこにいるだけで、その人の助けになることがあるんですね。パンを差し入れてくださったかたも、毎回参加できなくても「ここがあるだけで安心する」と言ってくださった。これが非常に大きなことだと思っています。

第2話につづく>

『小さな森イスキア』

http://chiisanamori.life.coocan.jp/

撮影/オザキマサキ 取材・文/池田純子

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