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八ヶ岳食工房代表 加藤公貞(Kimisada Kato)さん
仕事は達成感を 味わえるものがいい 【第2話】

かとう きみさださん

元ワーナーミュージック・ジャパン・プロデューサー。日本で最初にボン・ジョヴィを紹介したことでも知られる。2011年、定年前の56歳で退職し、信州八ヶ岳山麓に「八ヶ岳食工房」を設立。信州の気候と天然調味料で熟成された生ハムやベーコンを一人で製造・販売している。

第1話は加藤さんのもとを訪れる相談者のこと、その人たちへのアドバイスについてお聞きしました。第2話では、加藤さんが音楽会社のトッププロデューサーを辞めて、八ヶ岳山麓で生ハム工房を開業するまでのストーリーをご紹介します。

自分の仕事も達成感を
味わえるものがいいと思った

僕自身の話をすると、30代で音楽会社の海外の部署にいて、ボン・ジョヴィというバンドと知り合いになった。たまたまニューヨークで開催された何かの会で、キーボードのデヴィッド・ブライアンを紹介されたんですね。

その後、彼らは東京に来て日本武道館でもライブをやるわけですが、そこで、僕がふと思ったのは、やはりアーティストって自分で詞を書いて歌って、世界じゅうを回って売れていくわけでしょう。自分の仕事も、そんなふうに達成感みたいなものが味わえるといいなと思って。ということは、いつかはサラリーマンを辞めて、自営に走らざるをえない。でも音楽的な才能はないし、どうしようかなって。

それがなぜ八ヶ岳で生ハム屋になったかというと、いまから30年以上前に勢い余って友達と八ヶ岳に小屋を建てたのが始まりなんです。週末、暇なときに来て、そこでベーコンとかソーセージを趣味で作っていた。

最初はソーセージ屋で当たれば、ひともうけできるという発想だったんだけど、ソーセージの相場価格って決まっていますよね。1本5000円のソーセージなんて誰も買わない。せっかく仕事をするのなら、労働単価の高い仕事をしたほうが、効率がいいだろうと考えて生ハムにいきついた。それで会社に勤めながら、生ハムを作るにはどうしたらいいかということを真面目に考え始めたんです。

そもそも生ハムを作るには、資格が必要です。自動的に付与されるのは、医学系の学部を卒業して、なおかつ国家試験にパスした人だけ。非常に高度な資格なんです。

僕は医学系ではなかったので、保健所の課長のところに3年以上通って教わった。保健所に行ったら、周りからは「また、アイツが来たよ」みたいな(笑)。それで課長に推薦状をもらって、研修を受けて、というふうにして資格をとりました。

麹菌を使った生ハムは
当時もいまもここだけ

八ヶ岳食工房の生ハムは、最初に塩をして、肉の中の水分を抜いてから麹に漬けています。肉のたんぱく質を麹菌で分解させてアミノ酸をつくるわけです。当時もいまも麹菌を使っているところはほかにないですね。

最初は書店に行って、麹菌の本を買って読むところから始めました。大豆のたんぱく質を分解して、うまみ成分を出したのが納豆ですよね。それを植物性のたんぱく質じゃなくて、動物性のたんぱく質にしたら、生ハムができるんじゃないかって仮説を立てて実験が始まった。ほんとうにそれで合っているのかなって。

生ハムは、細菌との戦いです。自分が見たことのないカビがいたら、その部分をカットして、真空にして微生物研究所に送る。いちばんこわいのは事故ですから。これまで7年やってきて無事故ですが、一人だから事故がないというのはあります。体調が悪いときは肉をさわる仕事はしないし、お酒を飲んだら刃物にはさわらない、そういった最低限のルールも一人だから守れる。

ふり返ってみると、最初に食べるときはこわかったですよ。自分で作った生ハムをカットして「これでおなかが痛くなったら病院か……、食べよ」って(笑)。食べて痛くならなかったら、次は家族。「みんなで食べようぜ」って家族に出して、おなかが痛くなるやつが出てきたら、ちょっと考えなきゃいけないなって(笑)。でも、そうやってデータをとって、すべてノートにレシピと過程を書いて、それに忠実にやれば事故は起きないということがわかってきたわけです。

毎日の定期収入の一部を
いつかのために自己投資

生ハム作りが成功するまでに、何百キロというお肉をムダにしました。でもサラリーマンだったから、毎月の定期収入の中から5万円を実験に回すことができた。自分のためにお金を使う自己投資ですよね。定期収入があるうちは、会社のコンディションがどうであれ、給料ってそんなに変わりません。今月は20万円だけど、調子が悪いから来月は10万円でよろしく、なんて会社はない。だとしたら、定期収入があるうちに、自分の将来のために一部を投資するといい。僕はそれで18年間、自己投資してきました。いちばん失敗するのは退職金をつぎ込んで、いきなり開業するケースですよ。

第3話につづく >

ほんとうにおいしい! 「八ヶ岳食工房」のサイトはこちら

http://8foods-factory.com/

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